第49章 父親
ヒアシ「〈日向〉に、何よりも囚われていたのは私だったようだ……。ヒナタ、本当にすまなかった。当主としてではなく、父親として、心から謝罪する。……家に、戻ってきてはくれまいか」
ヒナタ「っ……!!」
それは、ずっと、ずっと聞きたかった父の言葉だった。
ぎゅっと胸が締めつけられるようなこの痛みは、これまで感じでいた冷たい痛みとはまるで異なるもので。
じわりとヒナタの目に涙がたまる。
ヒアシ「ヒナタ……お前を、迎えに来た」
ぽたりと落ちた涙と、走り出しそうな自らの足に、ヒナタはハッと視線を移した。
ヒナタ「あ……っ」
そうして視界に捉えたのは、本家以外にも居場所を与えてくれたキリとネジの姿。
キリとネジは互いに目を合わせると、ふと微笑みをたずさえて、ヒナタに視線を戻した。
ネジ「ヒナタ様の思うままに」
その隣でこくりと頷いたキリに、また、ヒナタの目から雫が落ちる。
どうして、自分にそこまで優しくしてくれるのか。
どうして、自分をそこまで甘やかしてしまうのか。
まだ弱さの残る自分は、その優しさについ甘えてしまう。
ヒナタ「……っ」
だっと走り出したヒナタは、ヒアシの胸もとに飛び込むと、ヒアシはそれを抱きとめるようにして包み込んだ。
ヒナタ「父様……っ! 父様」
ヒアシ「ヒナタ、すまなかったな。今まで辛い思いをさせた」
ぶんぶんと首を振って、ヒアシにしがみつくヒナタを見つめる瞳には、愛おしさや優しさが含まれているような気がした。