第49章 父親
ネジの不平の言葉をあしらいつつ去っていくシカマル。
そんな二人の姿を見送っていたキリとヒナタは、どちらともなく笑い声を上げる。
キリ「ふふっ」
ヒナタ「くすくす」
キリ(ヒナタ達、和解したみたいで良かった……)
キリ「……彼、もともとは優しい人なのね。前とは全然違っていたから驚いたわ」
ヒナタ「ネジ兄さんは昔、ドジばかりするわたしの面倒をよく見てくれたよ」
キリ「そう」
ヒナタ「そういえば、昨日も初めてじゃないみたいだったけど、キリちゃんはいつネジ兄さんと関わりがあったの?」
キリ「少し前にね、ちょっと」
ヒナタ(任務で一緒になったのかな)
キリ「戦ったわ」
ヒナタ「え?」
キリ「彼と。戦ったわ」
ヒナタ「え、と……しゅ、修業で一緒に?」
キリ「いえ、敵として。全力で」
キリがにこりと微笑んでそう言えば、ヒナタは首を傾げながらつられて笑顔を返した。
キリが見る限り。ネジの昨日からの態度と、ヒナタの態度を見ていれば、互いに少し気遣っている様子はあったが、決して悪いものではなかった。
きっと、複雑に絡まってしまっていた糸は、綺麗に解けてくれたのだろう。
キリ「ヒナタ」
「どうしたの?」と、こちらを窺う心優しい少女。
彼女が傷付くところは、もう見たくなかった。
キリ「どこに行くかはヒナタが決めればいい。もちろん私のところなら歓迎するわ。他には、彼のところでも……あなたの家に帰るのも」
ヒナタ「!」
キリ「私には、来るでも来ないでも。どちらになっても、気を遣わなくていい」
「他の意見は気にせずに、ヒナタ自身の気持ちに従って決めたらいい」と、そう言えばヒナタは少し視線を地面へと落とした。
ヒナタ「うん……ちゃんと、考える」
「ありがとう」と、礼を告げたヒナタに、キリはポンポンとその背中を押して応えた。