第49章 父親
昨晩はヒナタを巡ってキリと争った結果、両者最後まで引く事なく力尽きて、小一時間ほど前に目が覚めてから、また争っているところだと。
そう言って、それが何か?とでも言うような視線を向けて来るネジに、シカマルの内心は穏やかではなくなった。
シカ(忍っつっても、女の家に……女しかいない状況で男一人で泊まってくってのはどうなんだ?)
ぐぐっと無意識に力がこもった右手のせいで、めしゃっとヨシノの差し入れが潰れる音がする。
シカ(つーかお前ら仲良くもなかっただろうが。ついこの間まで、いがみ合ってた奴の家に泊まってくんじゃねぇよ)
キリ「潰れてるわ」
ひょいっと手土産を持って、中身を確認するキリに、シカマルはハッと我に返る。
シカ「あ、やべ。悪い」
キリ「ああ、大丈夫そうね。ご飯はもう済んでる?」
「まだだったら一緒にどうか」と言うキリのお誘いを、有り難く受け入れる。
もともと、ヨシノから渡されていた差し入れには「あんたも一緒に食べて、キリが上手くやれているのか様子を見てきてくれ」とのお達しで、多めに入っていたので好都合だった。
シカマルが腰を下ろすと、キリ、ヒナタ、ネジの三人は既に調理完了となっていた朝食をよそいはじめる。
そんなキリ達に、少々疎外感を感じながらもシカマルが完成を待っていると、艶のある白米に、味噌汁、野菜と魚の炒め物、さらにヨシノのおかずも加えられて、食欲のそそる朝食が目前に並んだ。
「いただきます」と、全員で手を合わせる。
キリ、シカマル、ヒナタ、ネジ。
そんな異色メンバーでの朝食が始まり、味噌汁を口にしたシカマルは感嘆の声をもらした。
シカ「! うめぇ」
作り手のあたたかみも感じるその味に、舌鼓を鳴らしながら、シカマルは箸を進める。
すると、味噌汁に花形の人参が入っていた。芸も細かいものだと感心しながら、ぱくりと口に入れる。
シカ「これ誰が作ったんだ?」
ヒナタが淹れてくれた熱い茶を飲んでいると、その返答は隣から寄せられた。
ネジ「俺だ」
シカ「ぶはっ!! ごふぁっごほっ!?」