第49章 父親

話の真偽を確認したいと、ネジはヒアシを見据える。


ネジから、分家の使用人たちが噂していたという一通りの話の流れを聞いて、ヒアシはそれが間違いではない事を伝える。


ネジ「！！ では、ヒナタ様は今後キリのもとで暮らすという事ですね」

ヒアシ(……)


確かに、分家の噂は何一つ違いはないが、ヒナタをキリや奈良家に渡す事は決定されたものではない。

しかし、その事について、ヒアシは自分自身で答えは出ていなかった。


ヒアシ「いや……」

ネジ「それでは、ヒアシ様。ヒナタ様を分家でお預かりさせてもらう事に、許可を頂きたく思います」


ヒアシ「………今、何と言った？」

自分の聞き間違いだろうかと、ネジに再び聞き返せば、ネジは淀みなく懇切丁寧な説明をあげる。


ネジ「はい。ヒナタ様を分家でお預かりする事の許可を頂くために、参りました。……確かにキリのもとで暮らす事になっても、悪いようにはならないでしょう。ですが、ヒアシ様も分家とはいえ、親族にあたる我々のもとにヒナタ様がいらした方が御安心なさるはず。それでよろしいですね？」


再度受けた説明をも、理解するまでに時間が必要だった。

ヒアシ「なぜ……ネジ、お前は宗家を恨んでいたのではなかったのか……？」


その言葉に、ネジはぴくりと反応を示した。

ネジ「正直に申し上げれば……宗家を、当主である貴方を恨んでいる事に変わりはありません」


ヒアシ「ならば、なぜヒナタを」


そう問えば、ふわりとネジは眉を下げて困ったような笑みを浮かべる。


ネジ「以前、キリに言われた事があります。そして……私は忘れていた事を思い出しました」

ヒアシ「……」