第49章 父親
第49話 父親
日向家へ訪れたシカクは、使用人に案内されるままに、奥の部屋へと通される。
シカク(……ここに来るのも久しいな)
『ヒアシ様を呼んで参りますので、こちらでしばらくお待ち下さい』
日向家と奈良家は、猪鹿蝶のように古くから縁のある間柄というわけではないが、やはり同じ木ノ葉で名高い家柄であるためそれなりの交流はあった。
シカク(それにしても……)
ふと先ほどのキリの様子を思い出して、シカクに笑みがこぼれる。
シカマルとの修業中に、キリはやって来た。
えらく神妙な面持ちに、修業を中断して話を聞けば、キリは日向家とそれはもう盛大に揉め事を起こしてきたと告げた。
キリと別れてからのこの短時間の間に、まさかそんな事が起こっていたなんか誰が予想出来るだろうか。
全ての経緯を聞き終わって、ぽかんと口を開けたままマヌケ面を晒しているシカマルとシカク二人を、キリはちらちらと交互に視線を行き来させて様子を伺っていた。
シカ「お前……まじかよ。いや……はぁ、まあお前らしいっちゃお前らしいっつーか」
ぽりぽりと少し困った顔で頬をかいて、シカクに視線を向けるシカマルと、おそらく心情は一致していただろう。
シカク「キリ」
キリ「!!」
名を呼べば、キリはただでさえ綺麗だった背筋をバッとさらに真っ直ぐに伸ばした。
シカク「くくっ、別に怒っちゃいねぇよ、そんなに硬くなるな。ヒナタからも話を聞きたい。今はキリの家にいるか?」
キリ「はい」
シカク「よし、じゃあ行くか。シカマル、今日の修業はここまでだ。先に帰って、今の話を母ちゃんにも伝えといてくれ」