第48章 殴り込み
そんな中で、キリの力強い声が響いた。
キリ「ヒナタは芯に強さを持っています。そして、この家の事もしっかりと想っています」
ヒナタ「!!」
悲しさよりもキリの言葉で嬉しさが上回って、そして、その嬉しさを恥ずかしさが上回る。
今道場にいる数十人の家人たち全員がキリの敵であるのに。たった一人でその中心にいるキリは、少しだって怖気付いてなどいない。
自分が逃げ出してしまったそれと、キリが戦っていた。
ぎゅっとこぶしを強くにぎれば、激しい破壊音が聞こえて、ヒナタはびくりと体を竦ませた。
それから、キリは告げた。いつもの落ち着いた声音に、確かな怒気を含ませながら。
初めから自信の無い人間がいるわけがないと。
この環境でヒナタが真っ直ぐに育ったことに感謝するべきだと。
ヒナタが何を言っても傷付かぬと思っているなら、父親を名乗る資格はないと。
当主としてではなく、父親としてヒナタの事をどう思っているのかと。
そうヒアシに訴えるキリ。ヒナタの中に込み上げて来た感情は、ひどく喉奥を熱くさせた。
キリ「ヒナタは、私が貰うわ」
ヒナタ(……っ)
もうこれ以上、溢れようとする涙を止める事が出来なかった。
一度堰を切ったそれは止まる事なく、ぼたぼたと床へとこぼれていく。
キリ「っ……考えて返答をするべきだわ。私は……一度ヒナタが私のもとへ来たなら、絶対に返さない」
ヒナタ(キリちゃ……っ)
その直後「いい加減にしないか」と、威圧感のある家人の声が聞こえて、ヒナタは道場の中へと飛び込んだ。