第48章 殴り込み
『いい加減にしないか!!』
キリ「っ!!」
キリの腕を取っていた中年の男が、ひねっていたキリの腕に更に力を込める。
折られるーー
そう思った瞬間だった。
ヒナタ「やめてっ、やめて下さい!!」
キリ「!!」
道場に飛び込んで来たヒナタは、大粒の涙を流しながら男の腕ごと、キリの腕にしがみつく。
キリ「ヒナタ……!」
ヒナタ「っく、お願っいしますキリちゃ、んを離して下さい! 代わりに、わたしの腕を……っ」
酷い嗚咽混じりに頭を下げるヒナタに、男のキリを押さえる力は緩まる。
キリ「ヒナタ! 下がって」
キリから手を離して、ヒナタに手を伸ばした男を見て、キリは慌ててヒナタを抱き寄せる。
そのまま、バッと男の手を払ったキリは、 男に鋭い視線を向けた。
ヒナタ「うっ、キリ、ちゃっ……」
泣きじゃくるヒナタを庇うようにギュッと抱きしめるキリ。
『………』
そんな二人を見て、もとより「退いていなさい」とヒナタを後ろに下げるつもりで、ヒナタに危害を加えるつもりはなかった男は、少々困り顔でヒアシに視線を送り、次の指示を仰ぐ。
ヒアシ「………はぁ、もういい。お前達。下がれ」
ヒナタ「キリちゃん、行こう」
キリ「……私は返答をまだ聞いていないわ」
その言葉に、ぶんぶんとヒナタを首を振る。
ヒナタ「もう、もういいの。キリちゃん、ごめんなさいわ、わたしの、わたしのっせいで……っ」
ぐずぐずと涙を流しながら、ヒナタはキリの体を抱きしめる。
キリ「………」
「わかった、行きましょう」と、道場を出る直前に、キリはもう一度ヒアシに視線を向けたが、少し視線を落としていたヒアシと視線が混じる事はなく、返答は聞けずに終わった。