第48章 殴り込み
キリ「当主、宗家、分家……ごちゃごちゃとうるさいわ」
そんな言葉がぽつりと道場に落とされた。
それをきっかけに、「このガキ!つまみ出せ!」とその場にいる者たちがキリを取り囲む。
その攻撃を、流して防ぎながらキリはヒアシに視線を向ける。
キリ「そんな大人の都合は、子供には関係ないこと。いま一度、聞きます」
目の前にいた女性を転倒させて、キリはヒアシのもとへと踏み出した。
キリ「あなたは、父親としてヒナタの事をどう思っていますか」
宗家の跡取りや、当主としてではなく、一人の父親としてヒナタの事をどう考えているのか。
キリ(!!)
ヒアシの所へと届く前に、門下生から腕を掴まれてその勢いのままキリは後方へと戻される。
キリ(……っ)
キリ「もしもそれでも、先程と同じ返答をするのなら」
ヒアシ「……」
複数の相手から攻められているキリに、一発、二発とまともに攻撃が入っていく。
『!!』
刀を抜いたキリが、横薙ぎに回転斬りを繰り出せば、周囲との間合いが開き、キリは瞬時に刀を持ち替えてヒアシに向けて放った。
そして刀は、ヒアシのすぐ横を通って、後ろの壁に刺さる事でその勢いを止めた。
キリ「ヒナタは、私が貰う」
『ヒアシ様になんて事を!!』
『もう加減は要らぬ。小娘、子供だからと許されると思うな!!』
怒りを露わにした群衆の勢いは増して、キリはすぐに腕を取られて、バランスを崩したところで頭を床へと押さえつけられる。
キリ「っ……考えて返答をするべきだわ」
ぐぐっと押さえつけられた頭を上げて、キリはヒアシを見据える。
キリ「私は……一度ヒナタが私のもとへ来たなら、絶対に返さない」