第48章 殴り込み
第48話 殴り込み
【待ちなさい】
【おい止まれ】
そんな数々の制止を気にもとめずに、キリは勢いよく襖を開けた。
『!!』
中にいた人達の視線がキリへと集中し、キリはその面々を一瞥する。
キリ(……)
若い衆から中年層まで、幅広い世代の中で、一歩引いた所にひときわ貫禄のある人物を見つける。
ずんずんとその人物に近付いていけば、近くにいた男がそれを拒んだ。
『おい、一体何の用だ』
キリ「あなたに用はないわ」
構わずに進もうとすれば、それ以上は行かせまいと、乱暴に肩を掴まれる。
キリ「……」
『!』
トッと足をかけて肩を押してやれば、男は転倒し、キリは目的の人物の目前に到達する。
キリ「あなたが日向家当主……ヒナタの父親で間違いなさそうね」
ヒアシ「……」
『ヒアシ様になんて口の聞き方を……!』
ざわつく群衆に、ヒアシの鋭い視線がキリを射抜いた。
ヒアシ「小娘、誰かは知らぬが……礼儀を覚えてから出直せ」
キリ「私はあなたに用があるわ」
ヒアシ「……出直せと言ったのが、聞こえなかったか」
キリ「……っ」
決して、声を荒げているわけではないその物言いが、ビリビリとキリの肌を貫く。
「続けろ」との命令が下って、慌ただしく稽古が再開され、ヒアシはキリから視線を離した。
キリ(……っ、ヒナタにもこんな風に…)