第47章 落ちこぼれ
体の力が抜けるような、いや、入れることが出来ないような、そんな感覚に陥った時、脳裏にキリとナルトの姿が浮かんだ。
冷たい視線や言葉の中で。それでも、まっすぐに前を向く彼らの姿が、ヒナタに勇気を分けてくれた気がした。
小刻みに震える体をなんとか奮い立たせて、なけなしの勇気を振り絞って、ヒナタは立ち上がる。
ヒナタ「あ、あの……」
ぴくりと視線を向けたハナビだったが、ヒアシの稽古は止まらずに、ハナビもまた組手へと戻る。
ヒナタ「父様! もう一度……!」
本当は怖かった。でも、祈るように声を上げた。
あの二人に負けないぐらい、自分だって頑張りたいと思ったから。
ヒナタの声に、動きを止めたハナビを、ヒアシは叱咤する。
ヒアシ「ハナビ! 修行中にどこを見ている!!」
ハナビ「! す、すみません」
そうしてまた、二人の組手が再開されて、ヒナタの鼻にツンとした痛みがはしった。
その後も少し、ほんの少しだが、その場にヒナタは道場にとどまり続けた。
「もう一度出ていけ」と「邪魔だ」と、言われようが、それでも良かった。
そうしたら「もう一度やらせて欲しい」と、頼むつもりだった。
だが……その後、ヒアシはただの一度もこちらを気にする素振りは見せなかった。
まるで、自分はこの場に存在していないかのような、空気のような扱いだった。ヒナタはたまってしまった涙が零れる前に、道場を後にする。
そしてすぐに、キリキリと痛んでいた胃から、胃液が込み上げてきて、ヒナタはその場にうずくまる。
ヒナタ「……っ」