第47章 落ちこぼれ
第47話 落ちこぼれ
ヒナタ「はぁっ、はぁ……っ」
青ざめたヒナタの表情、その額には大粒の汗が伝っていた。
ヒナタ(痛……っ)
裸足で走っていたヒナタは、何かを踏みつけたようで、その痛みに足の速度を緩める。
ヒナタ(……わたし……っ)
ふるふると体が震えているのは、悲しさからなのか悔しさからなのか、自分でもわからなかった。
ヒナタ(最近、良い事が沢山あって……)
キリという友人が出来て、一緒に話すことや修業をすることも多くなって、それが楽しくて大切で。
キバやシノと、しっかりと話し合う事が出来て、ヒナタの事も理解してくれて、以前よりもずっと良好な関係を築く事が出来て。
いのやサクラに、声をかけてもらって、そしてキリを含めた四人で医療忍術を学んだあの時間も……。
全て。全て、夢のように、幸せだった。
そんな中で、父ヒアシから珍しく、ハナビと共に組手を教えるから道場に来るようにと、声をかけられた。
ヒナタ(わたし、酷い思い違いを……)
嬉しくて、たまらなかった。
父に声をかけられたことが、自分にも、稽古をつけてくれることが。
本当に嬉しかった。
出来ると思った。もちろんこれまで修業を怠ったことは無かったし、努力はしているつもりだった。
今ここで、力を見せることが出来れば、父にも認めてもらえると、そう思った。
そうして、意気込んで向かった道場。
もう数年、ここへ足を踏み入れる事が無かったヒナタには、この匂いが酷く懐かしく感じた。
そして、その後。
床に伏せていたのは、自分一人で。
顔をあげれば、少し困った様子のハナビと、ヒアシの無機質な冷たい視線が刺さる。
ヒナタ「……っ」
現実を叩きつけられて、自分がいかに浮かれていたのかがわかった瞬間だった。
ヒアシのその視線に、あっと思った時にはもう遅くて。
ヒナタが立ち上がる前に「お前はもういい出て行け」そんな声が響いて、すぐにハナビとヒアシの組手が始まった。