第46章 天才と天才
震える声でそう告げるネジに、ヒナタは慌ててネジの隣に膝をついた。
ヒナタ「ネジ兄さん! やめて、顔をあげて下さい!!」
ネジ「!!」
ヒナタ「ネジ兄さんが頭を下げる必要はありません。ネジ兄さんの事を怒っても、恨んでもいません。わたしは……わたしは……ただ、ネジ兄さんともう笑い合う事は出来ないのかと……それが悲しくて」
ネジの近くで、ぽたりと何かが落ちる音がした。
ヒナタ「も、もし……間違いであれば、ごめんなさい。わ、わたしは、もう一度ネジ兄さんと……一緒にいる事を、笑い合う事を、許……してもらえるのでしょうか」
ぽたぽたと、頭を下げ続けているネジの耳横では、何かが落ちる速度が増していく。
ネジ「っ……許すなど、そんな……こちらの台詞です。これまでを謝って済む事だとは、思っていません。ですが、叶うなら……ヒナタ様、もう一度あなたのこれからを守らせて頂きたい」
ヒナタ「っ……ネ、ジ兄さん、顔をあげて下さい」
そっと、体を支えてくれていたヒナタのその言葉に、ネジはゆっくりと頭を上げる。
ネジ「ふ……ヒナタ様、ひどい顔をしています」
涙でぐしゃぐしゃになったヒナタの顔を見て、ネジは小さく微笑むと、ヒナタはカッと顔を赤くして、ごしごしと涙を拭った。
ヒナタ「ネ、ネジ兄さんこそ……!」
そんな小さな反論に、また少し微笑んで、ネジはヒナタへ手を伸ばした。
ネジ「そんなに乱暴に拭いてはいけません」
そっと、ヒナタの涙を拭えば、ヒナタの瞳から更に大粒の涙が溢れていく。
ヒナタ「……っ、うっ……っ」
ネジ「ヒナタ様、どうか泣き止んでもらえませんか」
ヒナタ「うっ……ネジ、兄さ、が」
嗚咽で聞き取りにくいその言葉に、ネジは笑いながらヒナタの涙を拭いていく。
ネジ「出来るなら、泣き顔よりもヒナタ様。あなたの笑った顔が見たい」
ヒナタ「!!」
そう言えば、ヒナタは涙ながらにも、ふわりと笑顔を見せてくれた。
ネジ(ヒナタ様……)
もう何年かぶりに見るヒナタの笑顔。
ずっと溢れ続ける涙で滲んだネジの視界に、そんな妹君の笑顔が愛しく思えた。