第46章 天才と天才
重苦しい沈黙が辺りを包んでいた時、水面に一匹の魚が跳ねた。
ヒナタ「む、むかし……ここに、一緒に来たことがありますね」
ネジ「!!」
ネジがヒナタに視線を向ければ、ヒナタはハッとして視線を地面へと下げる。
ヒナタ「ご、ごめんなさい……こんなこと……」
幼い頃に、こっそりと二人で抜け出して訪れた川べり。
あの時もこうして、水面に魚が跳ねたのを二人で嬉々として見つめていた。
帰宅後はしっかりと雷が落とされたが、ネジにとって初めての冒険だった。それを、ヒナタも覚えていた事がネジの心を揺らした。
ネジ「……懐かしいですね」
ヒナタ「!! はい……懐かしいです。とても」
ネジ「ヒナタ様」
ヒナタ「は、はい!」
ネジ「初めての顔合わせの日を、覚えていますか」
ヒナタ「!!」
その言葉に、ヒナタは何かを思い出す様な素振りを見せる。
ヒナタ「はい、よく覚えています」
そして、伝わる緊張の中に少し、ヒナタの表情が柔らかみを帯びた。
ヒナタ「実は、その前日……ネジ兄さんにお会いするのが楽しみで、一睡も出来ずにいました」
「朝が来るのが、とても遅く感じたのを覚えています」と、言葉を落としたヒナタに、ネジの目頭が熱くなったのがわかった。
ネジ「っ……」
バッと地に額と膝をつけて、ネジはヒナタに深く、深く頭を下げた。
ネジ「これまでの数々の無礼、本当に申し訳ありませんでした……っ」
ヒナタ「!」
ネジ「今更、都合の良い事を言っているというのは重々承知しています。許して頂こうなんて、そんな考えを持っているわけではありません。ただ、何も悪くないあなたに、今までどれほど残酷な言葉を吐いたのか……っ」