第46章 天才と天才
…………………………
【全く……こんな真昼間から部屋に籠って、本当に陰気臭い子どもだこと】
そんな言葉が耳に入って、逃げるように家を出たヒナタは、当てもなく里内を歩き回っていた。
ヒナタ「っ……」
そこで、真っ直ぐにこちらを見つめているその視線に気がついて、ヒナタの息が止まる。
ネジ「ヒナタ様」
ヒナタ「ネ、ジ兄さん」
ネジ「……お久しぶりです」
ヒナタ「は、はい、あの……」
失礼しますと、この場を去ろうとしたヒナタの体はネジによって制止される。
ネジ「ヒナタ様」
びくりと体を竦ませたヒナタを見て、ネジは少しヒナタとの距離を空ける。
ネジ「ヒナタ様……あなたと、少し場所を変えて話がしたい」
ヒナタ「は……い」
こうして、ヒナタがネジと隣合って歩くことなど、一体何年ぶりだろうか。
どくどくと速まる鼓動を何とか落ち着かせて、ヒナタは緊張から震える足を必死に動かした。
そして、そのまましばらく無言で歩き続けていれば。
二人は、人気のない川べりに到着し、そこでネジの足は止まった。
ネジ「………」
ネジ(今更……今更、何を言うつもりだ)
わかっていた。何年も前から。
何の非もないヒナタに、キツくあたることが、ただの……八つ当たりであること。
そんな子供じみた感情と言動を、認めたくなくて、受け入れる事が出来なかった。
仲の良い関係を築いていた幼少期。
しかし、父ヒザシの死から、一変した自らの態度。
この変化に、ヒナタは何も言わなかった。
ただ、その瞳が悲しみの色をうつしていた事に、気付かないフリをして。
そして悲しみはいつしか、恐怖の色に変わっていたことにも。