第46章 天才と天才
ネジ(………ヒナタ様に初めてお会いしたのは…)
今よりもずっと前の幼少期。
父ヒザシが死ぬその時まで、ヒナタを幼心ながら可愛らしい子であると思っていた。
初めての顔合わせの日が決まった時。
ネジは、従兄妹であるヒナタと会うのを随分と楽しみにしていたことを思い出す。
そして、実際に会って、大人しそうなこの女の子をこれから守っていくのだと、そう思った。
ヒザシからもそう命じられたが、ネジにとって、それは分家に生まれた自分の使命だとは思っていなかった。
ネジ(……あの時は……)
ただただ、血を分かつ身内であるヒナタを。
自分の後から生まれてきたこの少女を、守ってあげなければと、まるで妹が出来たような感覚で……兄のような気持ちで、そう思ったのだ。
【ヒナタ本人が関係ないなら。ヒナタもいい迷惑】
キリが言ったその言葉に、なんの間違いもない。
父ヒザシが死んだ事に、ヒナタの意思はないのだ。
その事さえなければ、ネジも変わらずヒナタの事を大切に……。
ネジ(思って、いたのだろうか……)
そんな痛くて温かい過去に、思いを馳せていたネジは、キリの声によって意識を引き戻される。
キリ「彼は、あなたが悪い人ではないと言ったわ」
リー「!」
そう言ったキリの視線の先には、リーの姿があった。
キリ「彼が言うなら、そうなんでしょう。そして、ヒナタもとてもいい子よ」
キリ(………)
キリは、以前ヒナタの家を訪れた時の事を思い出す。
ヒナタに向けられる決して優しくない視線と、心ない言葉たち。
そんな彼らの言動に、優しいヒナタが傷付かないはずもない。
あんなにも広い屋敷で、自らの帰る家で……敵ばかりなヒナタを思うと胸が痛くなった。
リーの言う通り、ネジが悪い人でないのなら。ヒナタも心根優しい人なのに、二人の関係はどうして歪んでいるのだろうか。