第46章 天才と天才
ネジ「……」
酷く、不愉快そうに顔を歪めるネジに、キリは口を開いた。
キリ「最後の技は、ヒナタが私に教えてくれた」
ネジ「!」
ネジも言われずとも……わかっていた。あの技は、もう何度経験してきたかわからない日向の流派だった。
キリ「私の体術を元より何倍も上達させてくれたのは、シカクさん」
あの二人を、弱いなんて言わせない。
キリ「二人に、謝罪してもらうわ」
私にじゃなくて、ヒナタとシカク本人に。
そんな強い眼差しをキリから向けられたネジは、険しい表情を見せた。
ネジ「……」
ガイ「部下の非礼は、俺が誠心誠意償おう! キリ、この通りだ!!」
ガバッと美しい詫びを見せるガイに、キリは少し戸惑いを見せる。
キリ「頭を上げて下さい」
ガイ「怒りが収まらない気持ちはわかる。だが、この通りだ。……日向の根は思っているよりも深い」
ガイは重く口を閉ざした。シカクならばいざ知らず、ネジがヒナタ本人に謝罪というのは酷過ぎる話だ。
部下の失態、すなわち己の失態。
その尻ぬぐいを上の者が行うのは、当然のことだ。
ガイ(俺が頭を下げることで引いてくれればいいが……)
キリ「……関係ないわ」
ガイ(っ……やはり駄目か……!)
キリ「宗家も分家も私には関係ない。仮にあなたが宗家で、ヒナタが分家だったとしても、どうだっていいこと」
ネジ.ガイ「!!」
キリ「……あなた、ヒナタが嫌い? ヒナタに会った事があるの?」
ネジ「……ヒナタ様には、昔お会いした事がある」
キリ「その時、ヒナタに何かされたの?」
ネジ「……」
キリ「そうじゃないなら、ヒナタもいい迷惑。あなたがそういう理由に、ヒナタ本人が関係ないなら、約束は守ってもらうわ」
ガイには申し訳ないが、とガイを気にかけながら、キリは少しためらいがちにそう溢した。