第12章 懐かない子猫
キリから人に関わろうとする言動は一切、見られない。
しかし、だからと言ってキリが他人に対して敵意を向けている様子もなかった。拒絶や無関心と、攻撃的は全く性質が違う。
ならば今、無理に閉じた扉をこじ開けることもないだろう。
キリ「奈良上忍もお忙しいでしょう。私にあまり構わないで下さい」
任務の報告のため、てくてくと二人は歩き始める。
シカク「キリ、その奈良上忍ってのをやめろ。かたっくるしくてかなわねぇ」
キリ「ですが……」
シカク「いいか、俺とお前はこれからずっとツーマンセルでやっていくんだ。同じ班の仲間に対して、いつまでも他人行儀なことするんじゃねぇ」
キリ「私は木ノ葉隠れの里に生まれたわけではありません」
シカク「んなこたぁ関係ねーよ。お前は今、木ノ葉の第11班で、俺の大事な生徒であり、それと同時に大切な仲間だ」
にかっと笑って、ぐしゃぐしゃとキリの頭をなでる。
キリ「……………はい。シカクさん」
戸惑いながらも小さくそう呼んだキリに、シカクは「ははっ」と声を出して笑う。
そう、キリは決して話が出来ない子ではない。会話を避けたがりはするが、耳は傾けてくれている。
シカク(まぁ、こいつとはこれからゆっくりやっていきゃあいい)
何も急ぐことはない。キリとはこれからずっと同じ班でやっていくのだ。時間はいくらでもある。