第12章 懐かない子猫
シカク「良くやった、いい動きだったな」
キリ「ありがとうございます」
キリは、噛まれたところから出ていた血を拭った。そこに表情や心の動きは感じられない。
シカク「あの猫も無事に飼い主のとこに帰れて良かったな」
キリ「…そうですね」
シカク(おっ)
キリは飼い主に抱かれて家へと戻っていく子猫を見つめる。
その表情が少しだけ柔らかいものに見えた。
今日の任務は他にも、倉庫の掃除や芋掘り等があったが、選ぶときにキリが子猫の捕獲を見ていたのはどうやら間違いではなかったようだ。
以前の子鹿の一件といい、この間、家に来た時の子鹿への接し方といい、おそらくキリは動物が好きなのだろう。
シカク(悪いやつにゃ見えねーよ)
キリが何故ここに来たのか。樹の里でキリが何をしたのか。
その全てをシカクや、里の上層部は知っている。
そして、上層部ではそんなキリの事を良く思わない者が多い。
木ノ葉の里にいつ反逆の意を示すかわからない、又はスパイかも知れないと。他里からやってきたキリに対して、今でも非常に排他的な言動が目立っている。
第11班でキリと共に行動することになり、シカクはそれを目の当たりにした。
もちろんキリ本人も、その空気を感じている。
また直に暴言を向けられる事があると分かった。シカクがそばにいても悪態をつくのだから、キリ一人の時はもっと酷いのだろう。
それはキリが自分たちに心を閉ざす原因の一つとして、少なからず影響を与えているだろう。
シカク「キリ、どうだ?この後メシでも一緒に行かねーか?」
キリ「遠慮します」
間髪入れずに返事が来て、シカクはがくりと肩を落とす。