第45章 獣的本能を持つ奴ら
シカ(そんな獣的な本能、みんながみんな持ってるわけねぇだろうが)
3対1で分が悪いプラス相手が悪(濃)過ぎるため、口に出しては言わないが、わかっているのだろうか。
万が一、その勘が外れていれば、リーは意気揚々と相手に突っ込んでおきながら、攻撃を目前にして突然停止。
さらに、意味のわからない半転をすることになっていたのだ。
つまりは、攻撃のチャンスを失うとともに、頭のおかしい奇行な行動をとる人物になるリスクが含まれていたのに、この三人は当たり前だと言うのだからやっていられない。
そんな悪態をついていれば、目の前では再び戦闘が開始される。
…………………………
リーの視界の端では、キリの刀がひゅっと斬りあげてきたのが見える。
リー(くっ……!)
上体を反らし、なんとかそれを回避したかと思えば、キリの刀は顔の横でピタリと止まり、くるりと向きを変える。
リー(しまった……!!)
咄嗟に後ろへと倒れ込めば、その途中、先ほどまでリーが位置していた所に、キリの刀が空を切っていたのが見えた。
そして、さらにこちらへ踏み込んだキリの蹴りが迫るのが見えて、リーは腕でガードする。しかし、もともと体勢を崩していた体は簡単に宙を浮いて、そのまま後方へと下げられた。
その体を追って、距離を詰めるキリに、リーは反撃を試みる。
リー(そうはさせませんっ!)
キリ「!!」
ガッとリーの回し蹴りを刀の側面で受け止めたキリが、小さく眉を寄せて、リーの腹部に掌打を打ち込む。
キリ「空中から回し蹴りに転するなんて、あなたどんな動きをしてるの?」
その掌打を横跳びに躱し、キリの横っ面に蹴りを繰り出そうとした時、キリの刀が横薙ぎに払われる。
リー「っ、君こそリーチの長い武器というのは、間合いが広くなり攻撃力も上がるかわりに、スピードが下がるのが普通でしょう! それなのに何故上がるんですか!!」