第12章 懐かない子猫
子猫の猛攻を気にもとめずに、ぐりぐりとその頭をなでてからキリは依頼主へと子猫を受け渡す。
ふくよかで豊満ボディなおばさまは、無事保護された子猫を見て、勢いよく腕を広げた。
「ミルクちゃぁぁぁぁぁぁん、良かったぁ!心配したのよ!?」
受け取った依頼主が涙目できゅっと子猫を抱けば、キリに頭を下げる。
「本当にありがとうね!あなたのおかげよ!あら、あなた怪我してるじゃない!ごめんなさい」
手当てをさせてと、手を伸ばしてくる依頼主のそれをキリは制止する。
キリ「いえ、結構です」
シカク(これなんだよな)
本人は優秀な生徒ではあるのだが、いかんせんコミュニケーションが全く取れない。
指示には従うし、キリを班の軸にすればキリからきちんと指示も出してくるが、これはそういった事ではないのだ。
任務の合間や道中に声をかけても「はい」や「そう思います」そんな相槌でしか返事はこない。
いつかシカマルが、やっとのことでキリと話しが出来たその翌日に、「あいつはブリザード女だ」と呟いていた意味が理解出来た。
担当上忍、つまりキリの上司といった立場のシカクであるから、まだこの対応なのだ。
同期のシカマルが相手ならば、ひとたまりもないのではないだろうか。
シカク(どうしたもんかねぇ)
シカクはあごに手を当てて、困ったように笑う。
今も、歓喜している依頼主に対して、キリは正反対の無機質対応だ。温度差が激し過ぎて、思わず苦笑いが出る。
そんな上司の苦悩も知らず、淡々とした様子で任務完了したキリが戻ってきた。