第45章 獣的本能を持つ奴ら
シカ(あいつも必死でキリを追ったんだろうな)
キリの親友、イチカ。
樹の里でキリの隣に立ち続けることが、どれほど険しい道だったのか。容易に想像出来る。
キリ「追い付く……私に…?」
シカ「おー、俺の今の目標はお前だからな」
男として、いつまでも好きな女より、弱いままじゃいられない。
せめて、キリが傷付いた時に、守ることが出来るぐらいの実力を早く身につけなくてはいけない。
それに……あまり考えたくはないが、もしこの先キリの好意を寄せている男に会うことになった時、そいつよりも弱いなんてダサい真似は絶対に回避したい。
キリ「それは、初耳」
「知らなかった」と、くすくすと笑いをもらしたキリに、うっとシカマルは言葉を詰まらせる。
ここ最近のキリは、以前に比べると本当によく笑うようになった。
そのこと自体はとても嬉しいことなのだが、なにせ突然の爆弾投下に、毎度大ダメージを食らっている。
シカ(っ……不意打ちだっての……)
そして、今回も深刻なダメージを受けた心臓を上から手で押さえていると、キリはまた不思議そうな顔を見せる。
キリ「どうかしたの?」
シカ「あーなんでもねぇ、持病だ」
キリ「!?」
持病なんてあったのかと、慌てるキリに、ある意味本当なのだが「冗談だ」と言って笑えば、キリは安心したように息をついた。
キリ「……びっくりした」
そう少し眉を寄せたキリに、謝罪を告げれば、少々気分を損ねながらもすぐに許してくれる。