第45章 獣的本能を持つ奴ら
それじゃあ、と研ぎ師の店を後にしたキリたち。
再び腰元の定位置に戻ってきた刀に、キリは小さく目を細めた。
シカ「それ」
キリ「!」
シカ「その刀、親からもらったもんだったんだな」
キリ「ええ。私が7歳の頃、実際に任務に出始めて、その時に」
シカ「げっ、お前そんな早くから任務に出てたのかよ」
キリ「でも最初は、簡単な任務が多かったから」
シカ「樹の里はみんな早ぇのか?」
キリ「いえ、私はみんなよりも少し早かった。同世代では、私の次がイチカで……イチカは9歳の頃に。他のみんなは、もっと後からだったと思うけど」
シカ(……まじかよ)
初任務が7歳。7歳ってなんだ。
7歳なんて、ただ寝て起きて飯食って。母ちゃんに怒られて、ちょっと忍術やって、母ちゃんに怒られて、寝て、起きる。
そんな一日を繰り返す毎日なはずじゃないのか。
シカ「はぁーーー……」
そんな突然のシカマルの長いため息に、キリは首を傾げる。
キリ「?」
シカ「いや、そりゃ簡単に追い付けるわけねーよなぁ……」
シカマルの初任務は今の年齢の12歳。
忍者学校のアカデミーを卒業してからで、自慢ではないがまだ正式な〈忍者〉になってから一年にも満たない出来立てほやほやのルーキーだ。
スタート地点でキリとの差が五年もあったのかと、シカマルはその新事実に肩を落とす。
仮に、よーいドンで一緒にスタートをしたとしても。
シカマルが周囲にもみくちゃにされながら、ようやく出発しましたという所で、トラック半周分ぐらい先を美しいフォームで爆走してそうなキリを相手にして、自分はこの差を埋めるためにどれだけの時間が必要なのだろうか。