第45章 獣的本能を持つ奴ら
シカ(あー……で、こっちが多分今回の諍いの発端になった奴、だな)
黒い長髪の男と視線が混じると、その男からは冷やかな視線が送られる。
ネジ「あの女の仲間か?」
シカ「まあ、そんなとこだ。随分キリが世話になったみたいじゃねぇか」
ネジ「なんだ、あいつに泣きつかれでもしたか?」
シカ「あ?」
その鼻のつく物言いに、シカマルは苛立ちを覚える。
ネジ「所詮は女ということか。あいつの代わりにお前が仇でも打つつもりか?」
「いつでも相手になってやる」と、嫌な笑いを浮かべるネジに、ぴくりとシカマルのこめかみが動く。
シカ(っ……、いちいち癇に障る野郎だな)
何故キリが、戦いを決するに至ったのかがおおよそ理解出来た。
ピリピリとした空気がシカマルとネジの間に流れ始めた時、そこに何かが飛び込んでくる。
リー「待って下さい!」
「戦うのならばネジの前に、僕と戦いましょう!」と間に入ったリーに、ネジは眉間に皺を寄せた。
ネジ「こいつは関係ないだろう。お前は下がってろ」
リー「いえ、見たところ彼はキリさんの友人のようです! キリさんを修業に誘ったのは僕で、戦ったのも僕です!」
どんと胸を張って、リーはナイスガイに親指を立てる。
リー「したがって、そんなキリさんの友人として訪ねてきた彼もまた、僕がお相手を務めるのは当然のことです!!」
そんな、わかるようなわからないような持論を展開させるリーを見て、 シカマルも少し冷静になることが出来た。
キリは次は必ず勝つと言っていた。
今ここで、シカマルがしゃしゃり出る幕ではないだろう。
シカ「あいつが、泣きついてきてくれるような女なら俺も安心なんだけどよ」
残念ながら、キリはただ守られることを望むような、そんなか弱い女ではない。
むしろ、少し油断をすればこっちがすぐに守られてしまうような、男として少々悲しくなってしまうような、そんな頼もし過ぎる女なのがキリだ。
ネジ「!」
シカ「お前たちの相手は俺じゃねぇ。あいつが自分でやる」