第44章 敗北
キリ「……本当のことよ」
シカ「体術で?」
キリ「ええ」
シカ「刀持ったお前が?」
キリ「……刀は、使ってないわ」
シカ「使っちゃいけねーって決めてんのか?」
キリ「そういうわけじゃない、けど……向こうも忍具は使ってない」
それに今は、研ぎに出していて、その時は刀を所持していなかったとキリは答える。
シカ「つまり、忍具は使ってもいいんだな? まあお互い忍具無しの状態で、キリに勝った向こうも充分すげぇけどよ」
キリがこくりと頷いたのを感じて、シカマルは再び口を開く。
シカ「じゃ、次は刀持参で再戦だな」
キリ「!!」
その言葉に、キリはぴくりと反応を示した。
キリ(再……戦?)
負けた事ばかりに意識があって、その考えは頭には無かった。
シカ「なんだよ、言われっぱなしでこのまま黙ってるつもりかよ。それとも、次やっても勝てねぇからやりたくねぇか?」
キリ「っ!! 負けないわ。次は、必ず……!」
シカマルがぐーっとキリに体重をかければ、どんどんシカマルに押されて小さくなっていたキリから、初めて押し返されて、つい笑いがもれる。
キリ「……今、笑った」
シカ「なんでもねぇよ、気にすんな」
くつくつと笑いをこぼしながら、そのまましばらく、ぐいぐいと背中を押しあって二人が攻防を続けていた時。
シカマルは、キリが強く体重をかけようとした隙に、くるりと体を反転させる。
キリ「!!」
突然支えがなくなって後ろへと倒れたキリを、自らの膝の上で抱き止める。
目をぱちくりさせて驚いた様子のキリに、自然とシカマルの口角が上がった。
シカ「もう大丈夫みてーだな」
キリ「!」
シカ「あんな顔でいられちゃ心配すんだろうが」