第44章 敗北
キリ(でも……っ)
キリ「私のせいで、ヒナタも、シカクさんまで……」
シカ「ヒナタ?」
なぜここで、ヒナタとシカクの名前が登場するのかと疑問に思ったが。シカクの帰宅後、真っ先に頭を下げたキリの姿が思い浮かぶ。
その時の姿と、今のキリの様子を見ていれば、ある一つの考えに行き着いた。
シカ(あー……なるほどな。そういうことかよ)
シカ「そいつに、ヒナタと親父のこと、何か言われたか?」
キリ「……っ」
シカ「ほら、そんな手握んなって。何言われたんだよ?」
ぐーっとキリの背中にもたれかかれば、小さな返答が聞こえてくる。
キリ「ヒナタを弱いと、私たちが弱者同士で傷を舐め合っているって………私の担当上忍だから、シカクさんまで、ぬるい教育をしていると言われたわ」
シカ(……すげーな)
このキリ相手に、そこまで言える奴が同世代にいるのかと、驚く中で同時に少し感心してしまった。
キリ「でもそれを言ったのは、私が戦った相手じゃない」
自分が戦った相手は、そんな事を言う人ではないとキリは零した。
シカ(……まあ、事の内容は大体わかった)
何故、当本人ではなく、別の人間と戦うことになったのか、その経緯はよくわからないが。
シカ(自分が負けた事も、あるにはあるかも知れねぇが、何よりも……)
その誰かから、ヒナタとシカクを悪く言われて。
弱いと言われた仲間の汚名を晴らすために戦ったが、それに敗北してしまったことが、キリの心をここまで重くさせていたのだろう。
シカ(……でもなぁ)
シカ「お前が負けるとこが、イマイチ想像つかねーんだよな」
いつものキリを一番間近で見ていたからこそ、余計に。