第44章 敗北
すると、背後の玄関扉が開き、そこからシカクの驚きを含んだ声が聞こえる。
シカク「おお、なんだみんな揃ってんじゃねぇか」
状況を知らず「ただいま」と、軽快な声を上げたシカクは、三人の空気に首を傾げた。
シカク「なんだ?」
くるりと、シカクの方へと振り返ったキリ。
頭の中にはずっと、ネジの言葉が離れなかった。
【そいつも随分とぬるい教育をしているんだな】
【所詮その程度か。俺が相手をするまでもない】
キリ「……っ、すみません。シカクさん、すみません……!」
…………………………
その後もシカマルたち三人は、問いかけ続けていたが、キリは何も言わなかった。
しかし、怪我の手当てをしている最中。
キリの手のひらに、拳を握って出来た傷があるのを見て、キリに何があったのかはわからないが、キリが今、どんな心情でいるのかは理解出来た。
そして、それ以上の言及をやめた三人とキリは、いつもよりも静かな夕食を終え、キリは早々に自室へと戻って行った。
そんなキリの部屋のドアをノックする男が一人。
シカ「キリ、開けるぞ」
少し待っても返答はなかったが、それも想定内であったシカマルは、気に留めずにドアを開いた。
すると、部屋で、膝を抱えて座っているキリの姿が目に入る。
そのまま、キリの方へと歩み寄ったシカマルは、とんっとキリの背中に自らの背中を合わせて、あぐらをかいた。
シカ「怪我、大丈夫なのかよ」