第44章 敗北
キリ「!!」
キリ(まだ、やれる……っ)
ぐっと更に力を込めるが、先ほどと同様に動かぬ自らの体。
そんなキリを見て、ガイは終了の合図を送る。
キリ(くっ……)
たとえ今、立ち上がったとしても意味を成さないことは、わかっていた。
リーは、キリを待っていたのだ。
キリが無様に地面に転がっている間に、リーが追撃をしていれば、間違いなくそれが決定打になっていただろう。
リー「キリさん!」
「良い試合でした!」と、手を差し出してきたリーを見て、キリはぎゅっと奥歯を噛みしめる。
キリ「……っ、自分で立てるわ」
リー「!」
そう言えば、少し困ったように手を引っ込めたリーの後ろから、それぞれの声があがる。
テン「へー、あなた結構やるじゃない」
ガイ「まったく、青春だった!!」
そんな労いの言葉をよそに、冷たい声が響いた。
ネジ「所詮その程度か。俺が相手をするまでもない」
キリ「!!」
リー「ネジ!」
熱い戦いをした相手に向かってそのような発言は許さないと、キッと睨んだリーに、ネジは小さく嘲笑を浮かべた。
ネジ「どいつもこいつも甘ちゃんばかりか、下らん」
そうして、ネジはキリから興味をなくしたように、くるりと踵を返して修練場を後にする。
テン「ちょっとネジ!」
「待ちなさい」と、パタパタとネジの後を追ったテンテン。
そして、リーとガイもまた。おそらく敗北したキリへの気遣いから、この場から立ち去った。
キリ(…………っ)
悔しさからぎりぎりと、強く握りこぶしを作る。
強過ぎる力のせいで、手のひらに食い込んだ爪先から、次第に血が滲み出してきたが、そんな事よりも心が痛くて。
言い様のない感情が溢れて仕方なかった。