第44章 敗北
残念ながら、今は加減をしてリーと戦っているわけではない。
仮に、忍術を使うとしても、今は印を組み終わる前に、リーの攻撃が先に届くだろう。
リー「そうですか! 同じスタイルの人間同士で戦うというのは燃えるものがあります!」
そうしてメラメラとやる気をみなぎらせたリーは、なかなか戦闘体勢に入らないキリに首を傾げる。
リー「キリさん?」
キリ「……さっきは、ごめんなさい。あなたと戦った後に、彼と戦うなんて、失礼なことを言った」
リー「!」
キリ「今からは、あなたとの戦いに集中する」
余力を残して戦おうなんて、そんな考えはリー相手に出来るような事ではない。
そして、何より。
この人に対して、そんな気持ちで戦うことは失礼極まりない事だと、先ほどまでの自分の行動を省みて思う。
すると、リーはすぐにニカッと気持ちの良い笑顔を見せた。
リー「僕は気にしてなどいません。なので、キリさんも気にしないで下さい!」
キリ「…ありがとう」
リー「はい! なんだか、あなたとは仲良くなれる気がします。正々堂々、熱く戦いましょう!!」
キリ「ええ……!」
そしてまた、戦いの火蓋が切って落とされる。
…………………………
息をつく間もない激しい応戦が、三十分ほど続いて、ついに二人の均衡は崩れた。
リー「はぁ、はぁっ」
キリ「っ………」
地面に伏しているキリは、自分を見下ろしているリーを見て体を起こし、なんとか膝を立てる。
しかし、立ち上がろうとした足は、力を入れようとしてもガクガクと小刻みに揺れるばかりで、キリの意思通りには動かない。
ガイ「そこまでだ!!」