第44章 敗北
第44話 敗北
キリ(………どうしよう)
先ほどから、一人、道の真ん中で立ち尽くしているキリ。
その目の前では、なんとも言いがたい光景が広がっている。
互いに号泣しながら「ガイ先生!」「リー!」と抱きしめ合う、おかっぱ緑タイツの男たち。
キリは修業を行うために、修練場へ行きたかっただけなのだが。
その途中、キリの進行方向で何やら緑タイツ大と緑タイツ小がもめ始めた(大が小を叱咤する形で)。
そして緑タイツ大が、いきなり緑タイツ小の頬をビンタしたかと思えば。
頬を押さえながら緑タイツ小が緑タイツ大を見上げて「目が覚めました」と涙を流した。
憧れや尊敬、そんな意味合いが大いに込められていそうな眼差しで緑タイツ大を見つめる緑タイツ小。
一体何に目を覚ましたというのだ。本当に早く目を覚ました方がいい、と思いながらもそれを見ていれば、今度は緑タイツ大が、小よりも遥かに大粒の涙を流し始めた。
「お前ならわかってくれると思っていた……!」なんて言葉を涙ながらに語った緑タイツ大と、緑タイツ小はどちらともなく熱い抱擁を交わし、おそらく互いの名前であるのだろうそれを叫んだ。
そして、話は現在に至る。
キリ(……修業、やめよう)
木ノ葉の里に来て、いや、それどころか生きていて初めて、そんな事を思った。
修練場に行くには、どうしてもここを通らなければいけない。
だが、自分にはこの目の前にいる緑タイツ達の間合いに入る勇気がなかった。
そして、きっとその勇気は持たない事が正解だ。