第43章 失敗
キリが少し前に、修業でぼろぼろになった忍具を見て「買い換えないと」と、こぼしていたのが聞こえていた。
あいにくシカマルにはキリほど、忍具が傷付くような修業が出来ていない。まだ買い換える必要はないのだが、一緒にいる内容など何でもいい。
こんな風に、何かの後押しがなければ、気安く誘うことも出来ない自分が腹立たしかった。
シカ(あーくそ)
そして何よりもいま、自分自身に腹が立っていることがある。
それは、先ほどの8班とキリの会話を見てからというもの、モヤモヤと決して綺麗ではないそれが胸の奥でチラついていることだった。
シカ(良かった、でいいじゃねーか)
そう。キバやシノとも打ち解けて、キリが本当はいい奴なんだと誤解も解けて〈良いこと〉であるはずなのだ。
頭ではちゃんとそれを理解している。
それなのに、何故。
ヒナタの時に思わなかったそれは、相手が男だというだけでこんなにも効果を現すものなのか。
シカ(くそ、だせぇ……)
すぐに余裕が無くなってしまう自分の器量の狭さに、情けなさが押し寄せる。
シカ(キリ)
心の中でその名前を呼んだ。
シカ(キリ)
一体、樹の里の想い人とは誰なのか。どんな男を想っているのだろうか。
それはどれほどの想いの深さで、たまになのかそれとも、シカマルと同様に毎日のように想っているのだろうか。