第43章 失敗
キリ「………笑いすぎ」
シカ「くくっ、わりぃわりぃ」
そんな謝罪を告げながらも、ひとしきり笑って、シカマルは目尻に薄っすらと滲んだ涙を拭う。
シカ「はー、そういや親父たちは?」
キリ「……」
シカ「キリ?」
キリ「……シカクさんたちは、任務報告の後そのまま上忍待機所に」
いつもよりそっけない言い方のキリ。少し笑い過ぎたかと謝罪を告げれば「別に」と、視線を逸らされる。
シカ「そんな怒んなって」
キリ「怒ってないわ」
キリの声色はいつもと同じだが、目を合わせてくれない。どうやら機嫌を損ねてしまったらしい。
そんな不満そうなキリに、謝らなければと思う前に、愛しく思ってしまった自分はもう重症だろう。
キリ「!」
ぐしゃぐしゃと頭をなでれば、キリは少し目を丸くする。
最近は特に、くるくると変わるキリの表情が見えるようになって、その事が嬉しくて仕方なかった。
シカ「ごめんな」
キリ「……怒ってないわ」
そう言って、目を細めたキリの言葉はどうやら今度こそ本当らしい。
「さんきゅ」と礼を告げ、乱れたキリの髪を整える。そして、名残惜しみながらキリの頭から手を離した。
シカ「今から忍具の買い出し行くんだけどよ、付き合ってくれねぇか?」
キリ「ええ。私もそろそろ買い換えないといけないと思ってた」
シカ「んじゃ、行くか」
シカマルの隣を歩くキリをチラリと盗み見る。
忍具の買い出しなど、ただの偽言だった。
まだキリと一緒にいたかった。
同じ時を少しでも長くしたかっただけだ。