第11章 上忍様のひと声で
キリに、木ノ葉隠れの里へ謀反を企てるつもりは一切なかった。
そんな意思はなくても。前科のあるキリを信用出来ないのは当たり前だ。
だから、この監視は仕方のないことだと。当然の対応だと、そう理解していた。それでも寝ても覚めても感じる視線には酷く息が詰まる。
時には敵意も感じられて、いつ彼らが向かってくるのかと思えば、心が休まることは一時もない。
「ふー」と深く息をつけば、肩が軽くなったような気がした。
キリ「……奈良上忍、ありがとうございます」
四六時中いた監視が、シカクのひと声で解散。きっと里の中でも影響力のある忍なのだろう。
シカク「ずいぶんとかたっくるしい呼び方だな。まぁ今後の事は、おいおいでいい」
かーっと困ったように笑って、頭をかいたシカクを見ていると、これまでずっと張り詰めていた緊張の糸がぷつりと切れた。
次第に視界がぼやけてくる。
シカ「!? おいっ、キリ!」
シカマルは、ふらりと倒れそうになるキリの体を慌てて支える。
シカ「っと、あぶねぇ」
突然倒れたキリの顔を覗くと、すーっと小さな寝息が聞こえてきた。
気を失うように眠ってしまったキリに驚きながらも、シカマルは監視という不穏な響きに眉をひそめる。
シカ「…監視って、こいつにずっとそんなもんついてたのかよ」
シカク「おそらくな。…常に行動を見張られて、今までろくに寝ることも出来なかったんだろうよ」
シカ「…………」
シカク「しばらく寝かせといてやれ」
シカ(おいちょっと待て、俺このままかよ!?)
シカマルの腕には小さく寝息を立てて眠るキリがいた。
………………………
ーーその後の出来事ーー
シカ「…よぉ、起きたかよ」
キリ「…!?」
キリがバッと体を起こせば。
こちらを見てにやにや笑うシカクと、一緒にお茶を飲みながら微笑んでいる女の人と。
何故か私を抱えて、しかめっ面をしているシカマルがいた。
キリ「私……?」
シカ「あー、あの後お前急に眠っちまってよ」
キリ「……どのくらい?」
シカ「1時間…いや2時間?」
キリ「………ごめんなさい」
シカ「おう」