第11章 上忍様のひと声で
シカク「シカマルの班はどうだったんだ?……と色々聞きたいとこだが、ちょっと待ってろ」
そう言って、突然外へと出て行ったシカクの背中を二人で見つめる。
「待て、置いていかないでくれ」という気持ちは、きっと二人が感じていただろう。
キリを連れて来た張本人が退出。当然、気まずい沈黙が訪れる。しかも残された二人ともが、今の状況についていけていない。
キリ.シカ「…………………」
ぱたぱたと小さな尻尾を振る子鹿の存在だけが救いだった。
シカ「………あー、なんか、悪かったな」
キリ「……いや…」
我が道をゆく父親についてか、この居た堪れない空気を作り出した父親についての謝罪か。
キリはひたすらに子鹿をなでて。我が家にいるはずのシカマルは居心地の悪そうに突っ立ったままで動かずにいれば。
キリは、ある事に気が付いた。
シカク「よぉ、待たせたな」
シカ「ったく、何してたんだよ親父」
シカク「おぉ、ちっとばかしうっとうしいのがいてな」
キリ(…やっぱり、いない)
シカクの言葉に、シカマルが首を傾げる。
疑問の解答は、ひとりごとのように落とされたキリの言葉だった。
キリ「…監視がいなくなった」
シカ「監視?」
シカク「第11班の顔合わせの時だけかと思えば、ずっとついてくるもんでな。帰らせた」
ははっ、と笑ったシカクにキリは目を丸くする。
シカク「お前の担当は俺だ。これからお前のことは俺がしっかり見てるさ」
キリ「では、これからはあなたが私について監視を?」
注意深く家の外を探ってみても、監視の気配は見つからない。
シカク「そんな面倒なことするわけねーだろ。あくまで、第11班の俺の生徒としてだ」
キリ「…そんな事が出来るんですか」
シカク「当たり前だ。俺を誰だと思ってんだ」