第43章 失敗
去り際にこちらを振り返ったキバは、ニッと口角を上げてキリを指差した。
キバ「キリ! 次は俺がぶっちぎりで勝つかんな!」
シノ「待て、次に勝つのは俺だ」
「いや俺だ」「俺だ」と言い争っている二人に、キリがぽつりと言葉をこぼす。
キリ「違うわ。次もヒナタ」
キバ.シノ「!」
三人の視線が集まったヒナタは、少し戸惑いを見せたあとで、力強く頷いた。
ヒナタ「が、がんばるね……!」
ギュッとにぎりこぶしを作って、そう言ったヒナタに、吹き出したキバと笑みを浮かべたシノがヒナタの背中をポンっと叩いた。
キバ「負けねぇからな」
シノ「俺も負けるつもりはない」
じゃあまた、と手を振って去っていく三人に、キリも小さく手を振り返してそれを見送る。
ある程度、8班との距離が離れたところで、それを見ていたシカマルは口を開いた。
シカ「なんだ、ずいぶん仲良くなったみてーだな」
キリ「………謝った」
シカ「?」
キリ「……犬塚キバ。初めて会った時、失礼な事を言ったから」
「そうしたら、彼も謝ってくれた。私に謝る必要なんてなかったのに」と、少し申し訳なさそうにしているキリの、その初めての時をシカマルは思い返す。
キリの不穏な噂が飛び交う中、アカデミーの教室へ入ってきたキリ。
表情も無く、冷たい空気をまとっているのに、ひどく凛としていた事を覚えている。
そして、イルカから促された自己紹介のあとに、新入りに飛びついたナルトとキバを一刀両断で切り捨てたキリの姿が思い浮かぶ。
シカ「ぶはっ、くっくっく……っ」
キリ「なに?」
突然吹き出したシカマルに、キリが首を傾げていると可笑しそうに笑うシカマルから視線を向けられる。
シカ「あんな強烈な自己紹介する女、後にも先にも絶対いねー」
男にだっていねぇよ。サスケだってもう少しマシな対応するんじゃねぇのか、と笑い続けているシカマル。