第11章 上忍様のひと声で
ただいまと気だるそうに言って、その足音は近付いてくる。
シカク「おう、シカマルおかえり」
シカ「…は?」
シカク「お前父親に向かって、は? はないだろ」
シカ「いや……は?おい何してんだよ」
繰り返した言葉は、おそらくシカクではなくキリに向けてのものだろう。
それはそうだ。シカマルの反応は至極当然であった。
家へ帰宅し、居間に入ると私がいて。鹿と戯れていては、誰だってそうした反応にもなる。
むしろ、比較的に冷静な対応をとれている彼を褒めてやりたい。
シカク「この間は慌ただしくて、ろくに礼も言えなかったからな。連れてきたんだよ」
鹿の様子も見せたかったしな、と言って子鹿をなでるシカクだが、シカマルは全く状況を把握出来ていない様子だった。
キリ「……第11班、私の担当上忍」
シカ「はぁっ!?」
話を通すため、追加情報を出した。
キリはすっとシカクを手のひらで指して、そう言えば、シカマルは口を開いたままで固まった。
シカク「急にでけー声を出すなシカマル」
シカ「ちょっ、待て。どういうことだよ」
そんな話は聞いてねぇ、と慌てるシカマルにシカクはとても対照的だった。あっけらかんとして、まるで日常会話のように飄々と説明する。
シカク「仕方ねーだろ。こういうのは正式に発表されるまで言っちゃいけねぇようになってんだよ」
俺だって急に言われたしなと、シカクはさらりと告げる。
シカマルは何か言おうとしていたが、逡巡した後で、はぁーっと長いため息をついた。
シカ「はぁ、もういいや。めんどくせー」