第43章 失敗
キバ「こいつは、人に言い方がどうこう言えるような奴じゃねーだろ」
そう言って舌打ちをしたキバ。
キリの頭の中で、アカデミーで初めてキバに出会った時のやり取りが思い返される。
【わけあってここに来た。それをお前たちに話す理由はない】
【私にお前たちと仲良くやっていく気もない】
これが、キリが初めてアカデミーを訪れた時に、よろしくと自己紹介をしてくれたキバに返した言葉だった。
あの時、アカデミーのみんなが、これから容易にキリに声をかけようなんて思わなくなるようにと、わざとみんなの前で過剰に冷たい態度をとり、厳しい言葉を選んだ。
キリへ真っ先に声をかけてくれたキバが、その矛先になったのだ。
当然、キバからすれば、ひどく不愉快な話だっただろう。
キリ「……あの時はごめんなさい」
キバ「!」
キリ「アカデミーでは、あなたに失礼な態度をとったわ」
キバ「な、んだよ急に」
謝罪を告げたキリに、目を丸くして驚きを隠せない様子のキバ。
そんな二人を遮るように、パンパンと紅が手を叩いてこちらに歩み寄る。
紅「あんたたちに何があったのかは知らないけど、今は目の前の任務に集中しな」
キリ「はい」
「すみません」と言って、シカクの横についたキリを信じられないものでも見たかのように、キバは開いた口を閉じないままに見つめる。
シノ「何をしている。置いていくぞ」
その声にハッと我に返ったキバは、ぽりぽりと頭をかいてから、いつもの紅班のフォーメーションについた。
…………………………
現在、状況は強盗団との激しい乱戦となっている。
急激に勢力を強めていた強盗団の数は、五十人ほど。
そんな敵軍の中心で、キバが唸った。
キバ「ヒナタ! いくぞ! シノ! 逃がすなよ!」
ヒナタ「う、うん……っ!」