第42章 誤解の連鎖
しかし、相手がカカシか三代目だと思っていたため、一緒に修業をすると言われた時には胸の奥がざわめいた。
カカシならまだしも、三代目ともなれば、一緒に修業というのは無理があるだろう。
そこで初めて、同期や他の男という可能性も視野に入れた。
最悪そうであった場合でも、焦りこそ出るが、後ろ向きな気持ちにはならなかった。
木ノ葉で出会った奴よりもシカマルの方がキリと一緒にいた時間や、築いてきた関係が深い自信があったからだ。
シカ(そんな奴に負けるつもりはねぇ……けどよ)
相手が樹の里の人間ともなれば、また話は変わってくる。
どんな奴かは知らないが、もしも幼い頃からの仲であるのなら。シカマルには幼馴染みという存在が、どれほど大切なものかをよく知っている。
キリは幼少期から施設で、忍として育てられている。みんなとの集団生活。
朝から晩まで同じところで過ごしていたキリの環境で、幼馴染みというのはどれほど関わり深いものか。
そんな存在がいるのは、大いにあり得ることだった。
イチカが前に、樹の里でキリは男女問わず人気があったと言っていた。
よく笑いもすれば、話もして、たまに子どもっぽいところもあるような、そんなキリだったという。
シカ(そんなキリを……俺は知らねぇ)
木ノ葉でのキリは、口数も少なく、いつも落ち着いていて冷静で。
ようやく笑った顔が見れるようになって、少し話をすることも増えてきたぐらいだ。
まだまだシカマルは知らないことの方が、圧倒的に多いだろう。
以前キリは、多くの同郷達を殺めた自分は、もう樹の里には帰ることが出来ないと、悲しみの色を背負いながら言った。
そんな故郷にいるライバルと、どのようにして戦えというのか。
シカ(くそっ……)
シカマルがキリを想っているように、キリも……そいつに想いを募らせているのだろうかと思えば、胸の奥が苦しいほどに締めつけられた。
シカ(なんだよこれ、痛ぇっつの……)