第42章 誤解の連鎖
シカ「同、期の誰かか?」
そう聞けば、困ったようにふるふると首を振ったヒナタ。
波立つ心情とは裏腹に、やけに頭の中が冷静になっているのがわかった。
同期でも微妙なところだが、それ以外ともなると、キリが関わっている男などいないに等しい。
そうなれば、木ノ葉ではなくてキリの……。
シカ「樹の里の奴か?」
ヒナタ「!」
慌ててぶんぶんと首を振ったヒナタに、シカマルの心臓が大きく嫌な音を鳴らした。
シカ「っ……そいつの名前知ってるか?」
ヒナタ(イ、イチカさん……でも、キリちゃんの知らないところで伝えるなんて絶対駄目……!)
きゅっと口を結んで、首を振り続けるヒナタにこれ以上聞いたところで、絶対に話さないだろう。
それに、樹の里の人間の名前を聞いたところで、シカマルに何がわかるわけでもない。
シカ(……まじかよ)
想定外の展開に、散らかった気持ちの整理が出来なくなっていく。
シカ「わりぃ、やっぱ今日は俺も戻るわ」
ヒナタ「っ! ご、ごめんなさい、わたし……っ」
シカ「あーお前が悪いわけじゃねぇからよ。気にすんな」
そう言って、この場を後にしたシカマルは、先ほどから痛みを訴え続けていた胸のあたりを強く握りしめる。
ーー10日前。
キリが「会いたい人がいる」と言った時も、気にはなったが、まだ余裕はあった。
シカクにも脅されはしたが。なんとなく、そういう類の男に会いに行ったわけではないと思っていたからだ。