第1章 プロローグ
討論とは到底呼べない断罪式が行われていた時ーー
木ノ葉隠れの忍が、物資を取りにやって来た。
マスクで顔の大部分を隠して、左目に眼帯をした銀髪の男は、ぽりぽりと頭をかく。
カカシ「ずいぶんと物騒な話ですね」
そう言って、ちらりと私を見る。
隣にはゴホゴホと絶えず咳をして、隈が酷い顔色の悪い男もいた。
カカシ「どうしたんです?大人がこんな女の子によってたかってする内容じゃないでしょう」
「こいつは化け物だ!里の仲間を…自らの両親でさえ虐殺をした!」
「そこにキリの意思はない!気持ちもわかるが、抑えてくれ」
「いつまた里に危害を加えるかわかったものじゃない!殺してしまえ!」
次々に飛び交う怒号に、木ノ葉の忍はうーんと何かを考えるように呟く。
カカシ「では、この子はうちで引き取りましょう」
ハヤテ「なっ、カカシさん何言ってゴホッゴホッ…」
ポンっと手を叩いて、突拍子のない事を言い出した男を私はただポカンと見つめるしかなかった。
周りを見れば、怒号を飛ばしていた群衆の大半が、私と同じように呆然としていた。
「何を言ってるんだ」
至極当然な樹の里の反応に、木ノ葉の忍はにこりと目を細めた。
カカシ「いやー、里に置いて再び危険がある事を危惧しているのであれば、木ノ葉隠れで預かるのなら問題はありませんよね」
死刑を求めていた里の皆はぐっと言葉をつかえる。
「そ、そうしていただけると、こちらも有難いが、そんな事が本当に可能なのか…?」
長の言葉に、木の葉の忍はまたうーんと何かを考える素振りを見せる。
カカシ「まっ、大丈夫でしょう」
そう言ってまた目を細めれば、私の方へと視線を向ける。
カカシ「このまま連れて行っても?」
「あ、あぁ、構わないが…」
まだ整理しきれていない長の反応をよそに、彼は「行こう」と私の背中を押した。
ぎりっと音が聞こえてきそうなほどに歯をくいしばる同郷たち。
突き刺さる憎悪の視線に私は目をそらす事が出来なかった。
* * *
ハヤテ「ちょっとカカシさん…どうするつもりですか」
カカシ「まぁ、なるよーになるさ。君、名前は?」
キリ「………キリ」
カカシ「俺ははたけカカシ。よろしくね」
ハヤテ(………はぁ、全く無茶苦茶な人だ)