第1章 プロローグ
その日、いつもと同じように薬を飲めばすぐに身体の異変に気付いた。
異常なまでに体温が上昇し、息が上がる。
(あぁ、ついに私も容量を越えてしまったんだろうか)
個体に合わせた薬量で、様子を見ながら増加されていくが、本来身体にあるべきではない異物。
中にはやはりそれに耐えられない者も出てくる。
意識を失う者、至る所から血が溢れる者、興奮状態に陥る者。
その症状は様々であった。
ぎゅっと身体を抱き寄せて、耐えようとするが、鼓動は急激にスピードを増していく。
普段とは異なる私を見て、仲間たちが様子を見に来る。
心配そうに顔を覗き込んで、医師を呼ぶ彼らを。私は殺したいと思った。
ドッと嫌な音がして、目の前の仲間に刀が刺さる。
驚いた表情でそれを見ている仲間たちに、私はまた先ほどと同じ感情を抱いて、その感情のままに体は動く。
1、2、3……と重なる仲間たちの姿。
この時、頭はやけにクリアだった事を覚えている。
今でもその時の事を、鮮明に思い出す事が出来た。
部屋にいた仲間たちを殺して、私が次に向かった先は、両親のいる家だった。
唐突な私の帰宅に、両親は驚きながらも、嬉しそうな笑顔を向けた。
普段ならばふわりと心があたたかくなるその笑顔が、今は内から湧き起こる殺人衝動に一瞬でかき消された。
絶命し、床へ転がる両親を見て、私は外へ出る。
殺したい。そんな衝動がなくなった時、一体何人の命は失われていたのか。
複数の忍によって私は拘束され
里の誉れだった私は、残虐な犯罪者となった。
私の処遇について、意見は分かれる。
その大部分では、里からの追放、またこんな化け物は殺してしまえと声を荒げた。
その一方、里の長を筆頭に数名といえるごく少数が、キリに責任はなく、薬物の容量越えが原因。
それに気を付ければ里にとって非常に強力な人材になると、キリの擁護にあたった。
しかし、いくら里の長と言えども、この偏りに偏った力の差では、結果は初めから出ているに等しい。
仮に私に原因は無いとして生かすことにしても、親族を殺された里の人たちの気持ちは収まらない。
それだけの事をした自覚はある。
殺してまえ。ついには、自分に殺らせてくれと声が上がった。