第42章 誤解の連鎖
もしかしてシカマルは、以前行ったシカクとの対戦後に話した、あの土遁の術を練習したかったのだろうか。
あれなら、キリがいなくては確かに修業が進まない。
キリ(でもそれなら。なおさら一緒に修業は厳しい)
まさかヒナタをほったらかしにして、シカマルとの修業をするわけにもいかない。
後ろ髪をひかれながら、キリは修練場へと足を進めた。
キリ(……一度、今度は連れて来てもいいかヒナタにそれとなく聞いてみるだけなら……)
…………………………
その日の夜、修業から帰宅したキリは、シカマルの部屋をノックする。
キリ「……開けても?」
シカ「!!」
声をかけた途端に、中からはガタガタと騒がしい音がして、部屋の扉はすぐに開かれた。
シカ「キリ、どうかしたか?」
「とりあえず入れよ」と、招き入れられて、キリもそれに従う。
初めて踏み入れた彼の部屋は、綺麗に整頓されていて、少しシカマルの匂いがした。
シカ「あんまり見るなよ」
シカ(別に何も変なもんはねーよな)
キリが修業に行った事で、暇を持て余していたシカマル。ヨシノから片付けでもしなさいとお叱りを受けて、本日、掃除を行っていたことが救いとなった。
だが、それでも。キリが自室にいるという急な展開に、そわそわと気持ちは落ち着かない。
キリ「あまり……物がないのね」
そんな言葉を、部屋に生活最低限以下の荷物しか置いていないキリに言われて、シカマルは笑いをもらす。
シカ「お前に言われてもな」
キリ「確かに、そうね。……なんだか落ち着くわ」
そう言って、あたりをきょろきょろと見回していたキリは、少しだけ口もとに弧を描かせた。
そんなキリの言葉と表情に、かっと顔に熱が集まったのを悟られぬようにと、シカマルはキリから視線を逸らした。