第42章 誤解の連鎖
シカ「……俺が、そこにいちゃ邪魔なのかよ」
みっともないと、わかっていた。
こんな風に、キリの約束に無理やり割り込もうとするダサい自分も。
こんなにも、キリのことになると余裕がなくなる自分も。
キリ「………ごめんなさい」
シカ(っ……何やってんだ俺は……)
眉を下げたキリ。そんな顔をさせたいわけではないのだ。
キリが謝らなくてはいけないことなんて、何ひとつ無い。
シカマルは痛いほどに拳を握りしめることで、胸の痛みをどうにか少しでも逸らそうと努める。
シカ「いや、悪い。また今度な」
そう言えば、ホッと安心したような表情を見せたキリに、ひときわ胸が痛んだ。
そして、キリはもう一度シカマルに謝罪を告げてから、家を後にする。
シカ(………)
キリが、悪いわけではない。
シカマルに、キリの行動を制限する権利など、どこにも無い。
仮に、ついていったとして、シカマルはどうするつもりなのか。
キリとそいつのやり取りを目の前で見守り続けるのか。
それとも、キリとそいつが仲良くならないようにと、いちいち間に入って邪魔をするなんて、そんな馬鹿な真似をするつもりなのか。
シカ(そんな情けねぇこと出来るわけねぇ)
それでも、胸に溢れ出るこの気持ちをどうすればいいのか、自分でもわからなかった。
以前は、キリを支えてくれる人物が現れることを、願えていたのに。それが出来なくなったのはいつからだったのだろうか。
シカ「くそっ……行くなよ」
そう呟いた言葉は、すでに修練場へと向かっているキリの耳に届くことはなかった。