第40章 はじめての
シカ「親父とか母ちゃんには言えなくても、俺には言ってこいよ」
それに、キリは少し困ったように眉を下げる。
キリ「……………」
シカ「俺もあいつには会いてぇと思ってるしよ」
そう言えば、ようやくキリの顔があがった。
キリ「……迷惑な時は言ってくれるの?」
シカ「迷惑なんて思わねぇよ。けど、無理な時は俺も無理だっつーから、お前も気にすんな」
キリ「……いつなら、言ってもいいの?」
シカ「会いてぇと思った時は、いつでも言やぁいいだろーが」
すると、少し考えるような素振りを見せたキリは、こちらを伺うように口を開いた。
キリ「……朝も?」
シカ「おう」
どちらかと言えば朝が弱く、午前中はぼーっとしている事が多いシカマルを思っての発言だろうが、キリからの誘いが迷惑なはずがない。
キリ「修業のあとも?」
シカ「!!」
正直に言えば、キリとの修業は毎回、生半可なものではない。
修業が終わった頃には、足腰が立たなくなるまでしごかれて、帰るのもやっとな事が日常茶飯事だった。
その後に、まるで体力強化のようなキリと鹿の激しいじゃれ合いに、自分は耐えられるのだろうか。
そんな考えを巡らせていれば、じっとこちらを見つめているキリと目が合った。
シカ「お、おう。当たり前だ」
キリ「!」
そう言えば、キリの表情が幾分か明るくなったのがわかる。
キリ「ありがとう」
そんなキリを見て、シカマルの口角も上がるが、力尽きてキリの肩を借りて帰っている自らの不様な姿が容易に想像出来て、心の中で苦笑いがこぼれた。