第40章 はじめての
そんなキリに、シカマルはにやり顏のまま、すくい上げた水をキリに投げつけた。
キリ「!」
しゃっとキリにかけた水は躱されて、シカマルは再び水をすくい上げた。
キリ「ちょっと……!」
次々に投げかけるが、それは華麗に避けられ続ける。
どうやらこの優秀な忍は、この至近距離からの液体をも避ける事が出来るらしい。
シカ「くそ、当たらねー」
シカマルが全力で水を投げかけ、キリも本気でそれを避ける。そんな二人の空気に誘われて忍び寄る一つの影。
キリ「後ろ……っ、危ない!」
シカ「うおっ!?」
次の瞬間、ばしゃんっと音を立てて、大きな水しぶきが上がる。
シカ「いってぇー」
キリ(……間に合わなかった)
シカマルの背後から飛びつこうとしている鹿が見えて、どうにかシカマルを引き寄せようとしたが、僅差で鹿のスピードの方が早く、キリもろとも倒れ込んでしまった。
上から鹿、シカマル、キリの順で重なりあっている今、キリの体はどっぷりと胸元まで川に浸かっている。
キリ「…………これは、もう無理ね」
シカ「くくっ、だな」
自らの姿を見て、冷静にそんなことを言うキリに、たまらず笑っていれば、小さな笑い声が聞こえた。
シカ(っ、今っ……!)
目を細めて、弧が描かれたキリの唇。それは木ノ葉に来てから、キリが初めて見せた表情だった。
シカ(抱っ…きしめてぇー……)
初めて見るキリの微笑みに、そんな欲求が湧いてきたのをシカマルは強くこぶしを握りしめる事で全力で抑え込む。