第40章 はじめての
本日の予定では、シカクの会議が終われば、キリはシカマルと共に修業をみてもらう事になっている。
それまで時間を持て余していたキリは、シカクが戻るまで一人で修業でもしようかと、部屋を出たのだが。
その途中で、大量の荷物を抱えたシカマルがいたので、こうして手伝うに至っている。
はたして今、おにぎりしか持っていないこれが手伝いになっているのかは定かではないが、何か別段予定があるわけではないので、キリは小さく首を振った。
キリ「いえ、特には」
シカ「じゃあよ、あいつに会いに行かねぇか?」
キリ「!!」
ここで言う〈あいつ〉を指すものが、すぐにあの子鹿のことを意味しているのが分かり、キリは二つ返事で頷いた。
シカ「じゃ、とっとと終わらせて行くか」
キリ「ええ」
そう言えば、重い荷物を持っているシカマルの事を気にかけながらも、先ほどより歩くペースが少し速くなっているキリに、シカマルの口角が上がる。
はじめの頃は非常に無機質で、全くといっていいほど、動く事のなかったキリの表情。
それも今では、ずいぶん人間味が出て温かなものに変わってきている。
これから鹿に会いに行くことが決まり、どこか嬉しそうにしているキリ。
見る人全員とまではいかなくとも、何人かはその感情の変化に気付く事が出来るだろう。
そんなキリの姿を見ていれば、さっきまでモヤモヤと胸に広がっていた感情は、すっかり影を潜めていた。