第39章 交わされた約束
帰宅するキリを見送るために、ヒナタが屋敷内を先導すれば、やはり聞こえてくるキリとヒナタへの非難の言葉。
容赦なく聞こえるそれに自然とヒナタの視線は下がり、申し訳なさからヒナタはこっそりとキリの様子を伺った。
ヒナタ「!」
するとそこには、身を縮めていたヒナタとは違って、真っ直ぐに前を向いたまま、凛とした雰囲気すら漂うキリの姿にヒナタは息を飲む。
ヒナタ「………」
門前まで来た二人が互いに顔を見合わせれば、ヒナタがぽつりと言葉をもらす。
ヒナタ「キリちゃんは…凄いね」
キリ「?」
ヒナタ「その……ごめんなさい。屋敷のみんなの声、聞こえてたでしょう……? でも、わたしみたいにおどおどしたりせずに、キリちゃんはいつも毅然としてて……」
本当に凄いと、わたしなんか……と、声を落としたヒナタに、キリは声音をやわらげた。
キリ「私も……はじめは出来るだけ人目を避けたり、隠れるようにして過ごしてた」
ヒナタ「!」
アカデミーの頃からいつも。どんなことがあっても、毅然としているように見えたキリの真相に驚いていると、キリは何かを懐かしむように視線を落とした。