第39章 交わされた約束
キリ「正直に言ってしまうと……あの後は、唐突過ぎて私もどうしたらいいのかわからなかったんだけど」
ヒナタ「ご、ごめんなさい」
困ったように眉を下げたキリに、きゅっと身も心も縮こまっていく。
ヒナタ(わたし、なんてこと……)
キリ「……あの時に、あなたがくれた言葉がきっかけだった」
ヒナタ「!」
はじめは、約束は果たさなければならないという思いからだった。とキリは小さく視線を伏せて、これまでの事を思い起こした。
…………………………
ーーあの日、ヒナタに言われた言葉。
【いつか、ちゃんと自分の優しさに気付いて下さい】
【ほんの少しでいいから、自分のこと許してあげて】
【誰かに、少しでいいから甘えて下さい】
そして、アカデミーを卒業して下忍の班決めを行う時。
みんながキリとだけは組みたくないと言っている中で一人。
手をあげてキリと組むと、そう言ってくれたヒナタ。
ヒナタの性格を思えば、あんな大勢の前で一人、発言することが彼女にとってどれほど勇気のいる事だったのだろうと思う。
キリ「……あなたの言葉が、ずっと胸の奥にあった」
目立つことも、自ら人と関わることも苦手なヒナタが何度、勇気を振り絞ってキリに歩み寄ってくれたのだろうか。
その勇気が、あの約束が。
キリが周囲と関わる第一歩となったのは間違いない。
キリ「本当に、ありがとう。今はまだ……自分を許すことは出来ない。自分の〈優しさ〉もわからないけれど……。それでも……私と友達になってくれますか」