第39章 交わされた約束
キリ(……しまった)
他人に興味がない、というよりは先の短いキリには他者に興味を示す必要がなかったため、日向一族というのがこんなにも名家であることを知らなかった。
悪評高いキリが尋ねる事によって、このままではヒナタの心証まで悪くしてしまう。
キリ(彼女に迷惑が……)
キリ「すみません、やはり今日は……」
出直して来ます、と言いかけたその時。
ぱたぱたと足音が聞こえてくる。
ヒナタ「キリちゃん……!」
パッと曲がり角から現れたのは、キリが探していた人物で。ヒナタは駆け足でこちらに近付いてくる。
そんなヒナタに、使用人はくっと険しい顔つきを見せた。
『ヒナタ様、なんですかバタバタとはしたない』
ヒナタ「!! す、すみません……」
『品位に欠ける行動は慎んでください』
ヒナタ「はい……気をつけます」
はぁ、とため息をついて、使用人は「では私はこれで」と、これからの案内をヒナタに引き継いで戻っていく。
お叱りに身を固くしていたヒナタも、キリと目が合えば、笑顔を貼り付ける。
ヒナタ「あ、えっと……ご、ごめんね。わたしの部屋にどうぞ……!」
部屋の中に案内されて、ぱたりと襖が閉じられた。
ヒナタ「す、座ってください」
差し出された座布団の上に座れば、キリはそわそわと落ち着きのないヒナタに視線を送る。
キリ「急に訪ねてごめんなさい」
突然の訪問を詫びれば、ヒナタは慌ててそれを否定する。