第39章 交わされた約束
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シカマルの心中で嵐が起きている一方で、キリはある家の前に到着していた。
キリ「……大きい」
今、キリが世話になっている奈良の家も、間違いなく立派な部類に入るだろう。
だが、ここは格が違った。
風格のある大きな屋敷。
厳かに掲げられている家紋の前で、キリはどのようにして目的の人物に会うべきかと立ち尽くす。
『失礼ですが、うちに何か御用でしょうか。当主様は本日不在ですが』
キリ「!」
この屋敷の使用人だろうか。四十代半ばの女性に声をかけられて、キリもそちらに向き直る。
キリ「いえ、当主には」
『では、どちらに?』
キリ「日向……ヒナタ、さんにお会いしたいのですが」
『……こちらでお待ちください』
キリが自らの名前と同期であることを伝えれば、一度中へと入っていった使用人が、再び戻ってくる。
『ご案内致します』
キリ「!」
「ありがとうございます」と、礼を告げて、案内のあとに続く。
真っ直ぐに遠くまで見える廊下を進んでいれば、ひとつふたつとキリに視線が刺さる。
『あれが樹の里の……』
『一体、日向に何の用があって……』
『ヒナタ様を訪ねてきたらしいぞ』
『なんと! あの日向の出来損ないと他里の化け物が……』
ぼそぼそと耳に入ってくる決して歓迎されてはいない言葉たち。
その言葉に、キリは顔を歪めた。