第39章 交わされた約束
シカクがにやにやといやらしい笑みをシカマルに向ければ、顔を赤くしながらシカマルは眉間に皺を寄せた。
シカク(そりゃうめぇはずだよなぁ? 母ちゃんが作った玉子焼きをキリに食わせてもらったんだからよ。美味しくないはずないよなぁ?)
シカ「くっ……うるせぇっての!」
シカク「なんだよ、何も言ってねぇじゃねーか」
シカ「だだ漏れなんだよ!」
何やら揉め(一方的に遊ばれ)始めた親子のやり取りを、キリはチラリと横目にしながら食事を再開する。
ーーキリが木ノ葉の里に来て、奈良家で世話になり始めたばかりの頃。
はじめは……苦痛でしかなかったこの時間が、いつからかとても好きになっていた。
穏やかに流れるこの時に、心が温かくなった。
キリ(ああ…そうか……もうずっと前から……)
親友の許しを得たからと、たった一日足らずで心を落ち着かせる事が出来たわけではなかった。
キリ(この人達が……)
彼らが、キリ自身も解くつもりが無いがんじがらめになっていた〈それ〉を……ゆっくりと時間をかけて、ほどいてくれていたのだ。
思い返せば、いつも見守ってくれていた。
彼らはキリを一人にさせなかった。
でも、本当に踏み込んで欲しくない時は、こうやってそっと気付かないフリをして、キリのために優しい距離を置いてくれる。
胸の奥が、じんわりとぬくもりを感じた。
キリ「昨日は……顔を出さずにすみませんでした」
放っておいて欲しいと思っていたのに。
こんな彼らだから、自ら一歩歩み寄ろうと、そんな気持ちを起こさせてくれる。